世界で一番貧しい大統領

         「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、

          無限に欲があり、いくらあっても満足しないことです。」

   

   ある新聞のコラムで目についた言葉、

   これは、2012年リオデジャネイロで開かれた 環境に関する国際会議でのウルグアイの

   大統領ムヒカ氏のスピーチの一節である。

 

   彼は、公邸に住まず 自分の農場で農作業をしながら暮らし、給与の大半を貧しい人達

   に寄付し 古びたマイカーを運転し公務に向かう 世界一貧しい大統領、清貧の人である。


 

   「私達は幸せになる為に文明を発展させてきたが、自分達が幸せに生きるために作ってきた

   仕組みがうまく使いこなせなくなってきた。

   80億の全人類が贅沢の限りを尽くしてきた西欧社会の様に 物を買ったり 無駄遣い出来

   るそんな原料は世界にはない。

   人より豊かになるために情け容赦ない競争をくりひろげ、誰もが持っている 家族や友人

   他人を思いやる気持ちはどこへいったのだろう。

   人間は文明を発展させたが、経済競争の中で私達は踊らされている。

   水不足や環境の悪化の本当の原因は、私達が目指してきた幸せの中身にある。

   見直さなければならないのは 私達自身の生き方なのです。

   

   社会が発展することが 幸福を損なうものであってはなりません。

   発展とは、人間の幸せの味方でなくてはならないのです。

   

            人と人とが幸せな関係を結ぶこと

            友人を持つこと

            地球上に愛があること-。

   

   これらは 人間が生きるギリギリ必要な土台で、発展はこれらを作ることの味方でなければ

   ならない。」

   

   世界から見ればとるに足らない南米の小さな後進国に、世界の巨人を見る思いだ。

   彼は“ぺぺ”と国民から親しみを持って呼ばれ、惜しまれながら 昨年 大統領を辞任したが、

   彼のスピーチは今も世界中の人達に共感の輪を拡げている。

   私が子供の頃 自家用車を持つことは夢のまた夢であった。

   当時 アメリカの黒人達がお湯よこせ運動でデモをやったというニュースをみて、何と贅

   沢な黒人達と思ったのだが、それ等すべて いやそれ以上のものを手に入れた私達は、果た

   して幸せになったのだろうか。

   国民幸福度は 小国 ブータンに はるかに劣る。

   何をもって企業経営すべきなのか。

   対前年比○○%UPの経営計画作成があたり前で過酷なノルマを与え、従業員を酷使する

   ブラック企業と思われる大手企業も多くいる。

   そんな経営者が素晴らしい立派な経営者として もてはやされる。

   

   私達は 今やマイナスの経済学、社員の幸福度を考えた経営を考える時ではないのだろうか。

   (『世界で一番貧しい大統領のスピーチ』 汐文社 子供向け絵本だが売れに売れている。)

 

                                   社長  寺 川 勲 雄